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リコの書くブログ040

大みそかからの宿題をもう一つ。
大掃除をして、修士論文を発掘してきました。
データはフロッピーの中だし、Macで作ってるしで今は読めません。
題目は
「高度好塩性細菌Halobacterium halobiumの遊走性突然変異体の研究」
です。1995年度。古いなあ。
ざっくりいうと、すっごい濃い塩濃度の中で生きてるHalo君がどんな子か調べたいんだけど、よくわかってないから、まずは

・どんなふうに増えるのか
・どんなふうに顕微鏡で見えるのか
・形はどんなのか
・突然変異体をつくって野生株と比べちゃおー

っていう内容です。2年間でしたが、べん毛の固定ができなくて、DNAのほうまで進まんかった・・何しろ浸透圧のせいで、ちょっとでも真水に触れると破裂してしまうのだもの。秒殺ですよ。どうしてよいかわからなかったです。
あと3年、博士課程やっててもできたかどうかわかんないなあ・・とちょっと今は思っております。
それでこの前ちょっと書いたときに、どんなふうに固定してみたのかという質問が出たので、それを書きますね。

まず、電子顕微鏡でべん毛を見る際の固定法は
グルタールアルデヒド固定とを行ったのですが、これがうまくいかず。いろいろとグルタールの濃度とか、固定時間とかを変えて実験しました。
基本の固定法で観察した電顕写真がこちら。

グルタール濃度2%、氷中2時間固定し、2%のリンタングステン酸で1回染色

このね。真ん中の黒いのがhalo君。で、ひょろりと出てるのがべん毛。で、周りの木の枝見たいのはゴミ。

グルタールで頑張った結果が次

グルタール2%、氷中1時間、4%のリンタングステン酸で3~4回染色

ダメダメなんですよぅ。きったない(右上のほうのは写真が劣化してる)でも、
菌体の映像はさっきのよりきれいなのです。

そのあとグルタールをやめて、ホルムアルデヒドで固定してみました。

ホルムアルデヒド2%濃度、室温、終夜固定 蒸留水で1回洗浄した後、4%のリンタングステン酸で3~4回染色

ホルムアルデヒドもいろいろ試して、これが最良でした。菌体は、これは変異株。ハートみたいな形だし、べん毛は変なところから生えてるけど、周りのごみも少なくて一番きれいにできました。

で、ここで時間切れだったんですよね~。

長々と変な写真ばっかり見せられてよくわからない方もいらっしゃると思いますが、最後にもう一つ。私が観察したhaloの遊走方法です。べん毛の動きが、他の菌(サルモネラとか)と違うのが分かります。初めてパソコンで図を描いたのもこれかなあ・・

これね、前に進むときはべん毛の束を右回転して、スクリューみたいに進むんです。で、止まると、ばらける。反対方向に進むときは、べん毛の束を左回転し手もどるの。普通の菌(例えばサルモネラとか)て、菌体の数か所からべん毛が生えてるので、止まった時にバラバラに動いて方向が変わり、そしてまた同じ方向にべん毛を回転して進むんだけど、haloは一か所からしか生えてないからこういうことになるのです。これは見ていて面白かったですね。だから、分裂するときはこうなるの。

Halobacterium halobiumの細胞周期の過程での標準的なべん毛形成過程のモデル

毎日研究室と実験室と電顕室にしかいなかったけど、幸せな日々でした。
自分の好奇心、探求心、解明したいという気持ちを全面にぶつけられて。
ネットなんかなかったけど、図書室に沢山本があって楽しかったな~。

私が今の様々な活動に必ず「具体的な行動」を伴おうとするのは、この
「好塩菌のべん毛をどうしたら電顕できれいに見られるか」にこだわった日々があったからだと思うのです。頭で考えているだけでも、やみくもに手を動かすだけでもダメ。理論と実践が両立していかないと物事は進まないんだよな~と思っているのでした。